2018年3月10日、子ども建築塾の一年の締めくくりとなる公開発表会が開催されました。
「7年目にしてようやくこんな授業ができた。」
塾の立ち上げ時から長らく講師を務めている建築家の太田浩史先生が、そう最後に感嘆のコメントを口にしました。
昨年度まで塾の助手を務め、建築教育の研究者である田口純子さんも、「来年度の塾の案内にぜひ載せてほしい。」と、ある印象深い子どもの発言に共鳴しました。
講師陣からこのような声のあがった今回の発表会、何が彼らにそう言わせたのか、当日の様子を振り返ってみたいと思います。
> 続きを読む
みなさん、こんにちは。工学院大学大学院修士2年の関野雄介です。
2月24日に行われた子ども建築塾の授業についてお伝えします。
この日は、発表会前の最後の授業ということもあってか、子どもたちはスタジオに到着すると、すぐに宿題で描いてきたプレゼンボードを机に広げて、それぞれが黙々と取り組み始めるところからスタートしました。
> 続きを読む
みなさま、こんにちは。2月17日に行われた第9回の授業の様子をお伝えします。
第6回の授業から続いていた本番模型の制作にひとまず区切りをつけ、今回はいよいよ発表会に向けてプレゼンテーションの準備に取り掛かりました。先生からプレゼンテーションの手法やボード作成のポイントなどをレクチャーしていただき、子どもたち自身がプレゼンテーションとはどんなものかを考えた上で、模型写真の撮影とプレゼンボードの作成を行いました。
> 続きを読む
みなさん、こんにちは。2月3日に行われた子ども建築塾の授業についてお伝えします。
インフルエンザが全国的に猛威を振るう中、素晴らしいことに子どもたち全員出席で授業がスタートしました。
イメージを膨らませる練習模型に始まり、最終プレゼンテーション用の本番模型までたくさんのアイデアを考え、つくっては直し、時には壊してまたつくってと進めてきた模型づくりもいよいよ今日で終わりです。
今日は全体でのレクチャーや発表などはなく、授業時間の2時間全てが模型づくりにあてられています。
「知らせる」「音楽を聴く」「つくる」「本を読む」「休む、くつろぐ」という各グループのテーマが合わさって1つの「みんなのまち」がもうすぐ完成しようとしています。
授業の回数が進むにつれ、1人で一つの作品というものだけでなく、2人の考えが合わさった作品や、さらには隣接するグループへとつながっていくような作品なども出てきました。
> 続きを読む
こんにちは。1月13日は、子ども建築塾2017年度後期第7回の授業がありました。
中間発表を終えてから第5,6回の授業ではまち全体を「みんなのまち」として考えてきました。スタジオ開放日で集中的に模型づくりを進め、どのグループも「まち」らしい模型ができてきました。
> 続きを読む
みなさん、こんにちは。昨年12月23日に行われた子ども建築塾後期第6回の授業の様子をお伝えします。
前回の授業では改めて敷地全体を俯瞰し、「みんなのまちの地図」を考えましたが、今回の授業の前半はグループごとにグループ内の敷地の地図について考えることから始まりました。前回の授業で考えた「みんなのまちの地図」から、敷地全体を通る水路の位置が決まりました。水路の幅は約150㎝、深さは約20㎝。イメージとして、飛び越えることはできない幅で、泳ぐことはできないけれど立って遊ぶことはできる深さです。どのグループにも共通の要素であるこの水路が敷地全体にわたることによって、子どもたちの視野も自分のグループの敷地だけでなく、敷地全体に広がったように感じました。
> 続きを読む
12月16日、後期第5回の授業は前回の中間発表の様子を踏まえ、当初の予定を変更し「みんなのまち」の地図をつくりました。後期の課題は5つのエリアに敷地が分けられ、グループごとに別のテーマが与えられていますが、今回の授業ではその垣根を超えて、各グループが5グループ全体の「みんなのまち」について考え、地図を完成させました。
子ども建築塾では、以前から後期は「まち」をテーマに授業を行っていますが、自分のグループだけでなく、5グループ全体の敷地について1日じっくり考えるというのは初の試みでした。また、机、椅子を使わずに、床に敷かれた台紙の上の白地図にみんなで向かうという新しい光景も生まれ、初めて尽くしの授業でした。
全グループの敷地内を南北に通っている坂道を「みんなのみち」、その両端の東西に通っている道路を標高の高さから「上のみち」、「下のみち」と名づけました。課題として設定された全グループを通るように設置する「水路」と「みんなのみち」を中心に、まずは「みんなのまち」について考えました。子どもならではのまちに対するファンタジーを広げ、かつそこにはどのような人や動物、植物が存在するのかを考え、具体的な「空想のまち」を描くことを目指しました。
> 続きを読む
2018年2月3日、今年度第7回目の会員公開講座が行われました。今回は「発酵と地域内循環」をコンセプトに掲げ、鳥取県の智頭町でカフェ「タルマーリー」を経営されている渡邉格さんを講師にお招きしました。渡邉さんは、パン・ビール・カフェの3本柱に支えられた事業への取り組みを通して培われた、地域の「場づくり」という考え方と実践を提唱されています。今回の講座では、渡邉さんによる地域内での自然と食糧生産が生み出す好循環追求の取り組みと、その中で見えてきた現代社会が抱える問題点や私たちが選択しうる生き方についてのお話をお伺いしました。
タルマーリーの発酵と地域内循環
まずは、「地域内循環」というコンセプトの説明がありました。これは、「無から有を生む」という生産体制の発案に端を発します。無から有を生むために、「空気中に浮遊している菌を利用」して、菌を採取するために「地域内で菌の採取と培養が行える環境を整える」。これが、渡邉さんが提唱される「地域内循環」という考え方です。具体的な活動としては、地域の農家の方々に菌のために環境を汚さない穀物生産をしてもらい、空気と水をつくる森林を扱う林業家の方々とも提携をされています。このように、天然麹菌や野生酵母を起点として、自然資源と食糧生産が地域内の好循環を生み出す環境づくりを目標に、タルマーリーは活動されているそうです。
> 続きを読む
昨年11月11日、島根県隠岐郡海士町の山内道雄町長をお招きして、今年度第5回目の会員公開講座が行われました。海士町のキーワードは「ないものはない」。人と自然が輝き続ける島を目指し、「なくてよい。大切なものはすべてここにある」という信念の元、2002年の町長就任以来、地域経営と地方創生に立ち向かう山内町長が、これまでなさってきた取り組みとその結実についてお話を伺いました。
生き残りを懸けた「自立促進プラン」の始まり
まずは「住民総合サービス株式会社」からお話が始まりました。これは、山内町長が役場職員の意識改革を始めるために掲げた役場の新しい立ち位置です。「自立・挑戦・交流〜人と自然が輝き続ける島に」を経営方針として職務に取り組み、毎週木曜日には「経営会議」も行います。さらに、評価制度を導入し、熱意と誠意のある職員がますますやる気を持って働ける環境をつくったり、2005年からは未来への投資として町長を含む役員の給与40-50%カットを行ったりしました。「トップ自ら身を切らない改革は住民に支持されない。トップが自ら変われば地域は変わる」と、山内町長は強調されます。このように始まった改革によって、役場の本気度が少しずつ地域へ伝わり、やがて住民の意識まで変わり始めました。これが、危機脱出を図るのに不可欠である危機意識が海士町のみんなで共有され、「島を自分たちで守り、自分たちで未来を築く」という自治の意識が芽生えた瞬間でした。
> 続きを読む
2017年12月16日、NPO Homedoorの理事長を務める川口加奈さんを講師に迎え、第6回会員公開講座が行われました。「ホームレス状態を生み出さない日本を目指して」と題して、野宿生活者(ホームレスの人)をはじめとする生活困窮者を対象とした就労支援の取り組みについてお話しいただきました。
ホームレス問題との出会い
川口さんは、14歳でホームレス問題に出会いました。中学の電車通学で新今宮駅を利用し始め、釜ヶ崎(あいりん地区)に立ち並ぶホームレスの人のテントを目にするようになりました。周囲の人たちから新今宮駅は「危ないらしい」「降りたらあかんよ」と言われ、ここには大人の隠している何かがあると思い調べ始めました。釜ヶ崎は通称あいりん地区と呼ばれ、行政が日雇い労働者を集める寄せ場としてつくられました。また、毎日のように炊き出しが行われていることを知った川口さんは興味本位でこれに参加しました。寒い冬の中、おにぎり一つのために500人以上の「おっちゃん」が列をつくっていました。当時、川口さんはホームレスのおっちゃんたちに対してあまり良い印象を持たず、「もっと勉強していればよかったのでは?」と思っていたそうです。それをおっちゃんたちに聞くと、彼らは勉強できるという環境がそもそもなく、勉強を頑張るか頑張らないかすら選べなかったことを知ったそうです。
貧困の連鎖
川口さんは貧困が連鎖することを指摘されます。貧困な家庭に生まれると、またその4分の1が貧困状態に陥るそうです。さらに、若いホームレスの人に顕著なのは、児童養護施設の出身者が10人に1人、母子家庭・父子家庭の出身者が3人に1人と、家庭環境が要因であることが多いようです。また、家庭環境が悪くなくてもホームレス状態になっている人がいることも指摘されます。
> 続きを読む