7月13日に行った講座B、第6回目の講義のテーマは「大震災から未来のまちを考える」です。
伊東塾長が復興計画に携わっている釜石から旅館「宝来館」女将の岩崎昭子さんと、
釜石市近郊にある吉里吉里でApeというcafé&barを営むミュージシャンの大砂賀宣成さんと奥様の里亜さん、3名の講師をお招きし、震災から1年4カ月を経た被災地の現状をお話しいただきました。
7月13日に行った講座B、第6回目の講義のテーマは「大震災から未来のまちを考える」です。
伊東塾長が復興計画に携わっている釜石から旅館「宝来館」女将の岩崎昭子さんと、
釜石市近郊にある吉里吉里でApeというcafé&barを営むミュージシャンの大砂賀宣成さんと奥様の里亜さん、3名の講師をお招きし、震災から1年4カ月を経た被災地の現状をお話しいただきました。
先日行われた講座B 第4回・第5回「建築はどのようにつくられるか|座・高円寺」のレポートを
塾生の牧野恵子さんからお送りいただきましたので、下記にご紹介させていただきます。
この「座・高円寺」の講座を通して感じたこと、学んだことをご報告いたします。
■コンセプトの実現
「芝居小屋」をつくる、その思いがそのまま建築になっていると感じました。
説明が無くても、ここがそうした思いをもってつくられているということが直感的に伝わるのではないでしょうか。
“ 小屋 ” や “ テント ”が持つ視覚的なイメージだけでなく、仮設的であることや、庶民的な親しみ、そして秘めやかさといったコンセプトが言葉を介在せずに実感できます。
それを可能にするためには沢山の仕掛けというか工夫があって、それを考えるのが建築家の仕事なんだと改めて確認することができました。
コンセプトの実現のために必要で大切なことが何なのか、たとえそれが一般的な建築計画でなかったとしても、
その見極めとそれを信じてやり遂げる力がこのような建築を実現させるのだと思います。
■技術の活かし方
技術というのはこのように活かされるべきものだということを教わりました。
ホールを上下に配置するというのは、一般的にはご法度とのことです。
しかし、そこを不可能と捉えずに新しい可能性を追求していくことが大切で、その際に技術が最大限の力を発揮してそれを実現していく。
建築を構想するとき既成の考えにとらわれ過ぎず、技術の力を信頼して様々な可能性の中から考えていかなければいけないことと、
またそうした新しい試みに際しては、丁寧な検証や検討が不可欠であることも学びました。
先日、まつもと市民芸術館で「立川志の輔独演会」を観賞しました。
そのとき、志の輔さんがこのホールの音響についてお話をされました。
落語向けの会場でないことはご本人も充分承知されており、したがって音響のチェックを入念にされるのだそうです。
ところが、向いていないどころか本当にちょうど良い響き方をするのでとても話しやすいのだとおっしゃっていました。
さすが伊東先生だと大きく頷いていました。
■まちとのつながり
そのまつもと市民芸術館は、レストランは私自身一度しかいったことがないですし、伊東先生のおっしゃるとおり決して評判の良いものとはいえません。
また、市民にとっての身近さもこの座・高円寺ほどの親しみがないようにも思います。
せっかくこんな素晴らしいホールですから、もっともっと良い使われ方をしていくはずです。
これから、何か積極的にかかわっていけることがないか探ってみたいと思います。
座・高円寺では、館長の桑谷さんのお話ぶりからも本当にこの劇場を愛しておられるのだなあと感じました。
ご夫婦の特別な日のディナーに、カフェ「アンリ・ファーブル」が利用されているなど、地元の方々にとっても身近で大切な場所になっているとのことです。
広場のように街とつながっていくというコンセプトがやはり実現されていました。
2回の講座を通して伊東先生の建築ができる過程を教えていただき、それまでは自分の仕事と何から何までまったく違う方法で
つくられているのではないかと考えていましたが、共通する部分も見出せて少し安心しました。「ああ同じ人間なんだ、良かった」というような。
ただし決定的に違うことも実感し、田舎で建築雑誌を見ながら、表面的な意匠性だけを取り扱っているような状況を何とか変えなければならないと実感いたしました。
みなさま、こんにちは。東京大学大学院、村松研究室 修士1年の神谷彬大です。
子ども建築塾、前期第5回目の7月7日は、前回図面をトレースした「House NA」という住宅を、実際に見学しに行きました。
雨が降ったり止んだりする、あいにくの天気でしたが、子どもたちはわくわくしながらHouse NAに向かう住宅地を歩いていきました。
すると、突然現れるHouse NA。
玄関を入ると、決して広いとは言えない敷地面積の中に多様な空間が展開されています。
子どもたちも、そして私たちTAも興味津々で、階段を上がったり下がったり、
雨の当たらないテラスまで出て外部空間の気持ち良さを感じたり、この家の仕組みを実体験として理解していきました。
子どもたちも、前回描いた図面を思い出しながら、だんだんと自分のイメージしていたものとの違いを感じていきます。
例えば、トレースした時に思ったよりも柱が細い、ということ。あるいは、重なる床同士の間に、
図面では気づかなかったたくさんの隙間があること、そしてその隙間を介して色々な視線の行き交いが生まれていること。
ひと通り見学してから、House NAに住んでいらっしゃるご夫妻と、設計者の藤本壮介建築設計事務所のスタッフの方への質問タイムが設けられました。
Q「この家に住んでいて、良いことは何ですか?」
A「どこにいても声が聞こえることです。」
上から下まで、ひとつながりの空間では、どこにいても、常にお互いのことを感じることができます。
Q「この家にはじめて入った時、どう思いましたか?」
A「すごく広い、と感じました。」
小さい敷地面積の中に、普通の3階建てを作っても、狭いまま。何階建てとも言えない吹き抜け空間は、この家を何倍にも広く見せています。
そして、子どもたちにとっても、やっぱり気になるのはプライバシーのようです。
Q「まわりから見られたりして、恥ずかしくないですか?」
A「恥ずかしい時も、恥ずかしくない時もあります。」
実は、恥ずかしい時もあるんですね。でも、伊東豊雄先生がその気持ちをうまく代弁してくださいました。
「恥ずかしい時もあるかもしれないけど、朝日がたくさん入るお風呂に入ったり、すごく気持ちのいい風が通ったり、
その気持ちの良さの方が大きいから、少し恥ずかしくても、この家に住むことを選んでいるんだと思うよ。」
壁に囲まれた家に住むことになれてしまった私たちは、このように他にはないような不思議な家を見ると
「ここに住むのは、大変なのではないかな」と思ってしまいます。
でも、House NAに住んでいるご夫妻は、このような新しい住まい方を実践することで、
私たちが知らない楽しみを、たくさん知っているのだと思います。
子どもたちは、最後に自分のお気に入りの場所を見つけて、スケッチや感想を書きました。
風が良く通る場所や、一人分の大きさの場所…ひとりひとりが自分だけの場所を見つけられるのも、House NAのすばらしいところです。
次回からは、もう一度、自分の住みたい家について考えていきます。
今回の見学が、子どもたちの発想にどう生かされていくのでしょうか。とても楽しみです。
7月2日は、講座B 第5回目「建築はどのようにつくられるか|座・高円寺」の後編で、
「座・高円寺」の現地見学に行ってまいりました。
前回の講座では、伊東豊雄建築設計事務所のチーフ・東建男さんから詳しい解説がありましたが、
今日は、実際の建築を見ることができる貴重な機会です。
© Manami Takahashi
午後7時、見学会が始まりました。ロビーに集合後、まずは1階にある「ホール1」を見学します。
こちらはブラックボックスと呼ばれるプロ対応の形式となっており、舞台と客席の位置や形、
大きさを自由に組み合わせて、作品の内容に応じた空間をつくることができます。
ただ、舞台を解体してすべて平土間にするには、10人がかりで半日かかるそうですが、
「スタッフが力を合わせてつくるのが楽しい」と、「座・高円寺」館長の桑谷哲男さんがご説明くださいました。
© Manami Takahashi
普段は上がることができないすのこの上も、特別に見学させていただきました。隙間からは下が見えています。
© Manami Takahashi
続いて、2階のカフェ・アンリファーブルへ。
昆虫学者の名前にちなんだこのカフェは、子どもたちにも遊びに来てほしい、という願いをこめて名づけられたそうです。
© Manami Takahashi
今日は休館日だったため、私たちの他にお客さんはいませんでしたが、ふだんは子連れの若いお母さんがランチやお茶をしに来たり、
近くの会社で働く方、劇場を使う役者さんたちが打合せやお食事に利用したり、地元に住むご夫婦が記念日にコースディナーを食べに来たり、
毎週日曜日には子ども向けの絵本の読み聞かせがあったりと、平日休日問わず、昼から夜まで、さまざまな方でにぎわっているそうです。
また、1階ロビーの階段から仕切りのない空間となっており、オーダーしなくても座れる席もあるので、
人の出入りも自由で、とても開放的な雰囲気だそうです。
今度は営業している日に、ぜひ訪れてみたいものです。
そして、カフェの奥にある階段で一気に地下まで下がり、「ホール2」を見学します。
こちらのホールはエンドステージ型と呼ばれ、舞台と客席は固定して使われる形式のホールです。
ふだんは貸ホールとして、主にアマチュアの方にご利用いただいているそうです。
© Manami Takahashi
続いてやってきたのは「阿波おどりホール」というユニークな名称のホール。
名前の通り、阿波おどりの練習や普及事業に優先的に使用するホールですが、阿波おどりの予約が入っていない時には、一般貸し出しも行っているそうです。
奥行きのあるこの空間は、ダンスやパフォーマンス、体操の練習や発表会などにも対応でき、開放的な気分が味わえるシンプルなスペースとなっています。
© Manami Takahashi
地下2階を見学した後は、地下3階までおりて、稽古場や作業室の見学をさせていただき、見学の行程は終了。
最後に、桑谷館長から、館の使われ方などのお話と、参加者からの質疑応答がありました。
© Manami Takahashi
桑谷館長からは「欠点のない劇場はない。ここは公演中にもロビーや街の音が聞こえたり、お客さんの足音が響いたりするけれど、
それらを欠点とみなすのではなく、お客さん、キャスト、スタッフが一体となって時間を共有できる。そんなふうにポジティブに捉えたい。
訪れた人とのコミュニケーションを楽しみながら、オープンなスペースとして、大勢の人に使ってもらいたい」と、お話くださいました。
そして、「今度は、演劇や公演を観に、ぜひ再びいらして下さい。」とあたたかい笑顔で締めくくりのお言葉をいただき、本日の見学会は無事に終了となりました。
見学に際して、ご案内いただいた桑谷館長をはじめ、お世話になった座・高円寺スタッフの皆様、本当にありがとうございました。
講座B第4回目と第5回目の講義は、伊東豊雄建築設計事務所が設計した公共劇場「座・高円寺」を取り上げます。
コンペから実施設計、施工、そして竣工後の運営に関して、メディアでは知ることのできない現場での裏話を含めて、詳細にお話くださいました。
具体的には、公共建築によく見受けられる町にむやみに開くのではなく、あえて閉じることにより秘めやかさを演出し、
それでいて1階部分の平面をフラットにして、そのまま外部に出てゆくことのできる、まるで展示場のような劇場を設計しました。
そして、7割以上の面積は地階におくことで、熱負荷の少ない地下空間を有効利用するとともに、地上のボリュームを極力小さくし、
まるで仮設の小屋のようなキューブ状の建築を提案しました。
そして、この案が見事コンペを勝ち抜き、事務所は基本設計、実施設計に取り組むこととなりました。
コンペの仕掛け人である演出家・佐藤信さんの後押ししもあり、「街と連動する劇場」をテーマとして、
1階の平面をよりフラットにし、街の中の広場がそのまま室内化したような、「空地」のような劇場を目指すことにしました。
まずは、屋根の形状が問題となりました。
コンペ案ではフラットな形状をしていましたが、佐藤信さんから1階のホールの天井高をより高くしたいというアドバイスと、
住民説明会の際に、住民の方から「鉄の箱はいやだ」という意見が出たために、実施設計ではより親しみやすさを重視して、
屋根型を取り入れることになりました。日影規制、内部の天井高、構造の3点を考慮しながらスタディを重ね、
最終的にはキューブに楕円錐や円柱を重ね併せて削り取ることにより、7つの一次曲面を持つ屋根形状が生まれました。
一次曲面は一枚の鉄板を曲げて作ることができるので、施工性にも意識しています。
そして、ホールA(座・高円寺1)、つまり1階に設ける演劇専用のホールは正方形の平面とし、方向性のないものとしました。
天井高は9m確保して充分な設備を収納し、さらに床も90cm下げることできるといったように、様々な演出に対応できるよう、仮設性の高い設計としました。
一方、区民ホールとして使用するホールB(座・高円寺1)は地階に設け、定形型のエンドステージを持つワンボックス型にして、使いやすさを重視しました。
また、2階にはカフェとオフィスが入りますが、劇場など市民が使うスペースと一体感を持たせるため、1階のホワイエからひと繋がりの空間となるよう設計しました。
まずは、外壁です。計画の初期段階では、MIKIMOTO GINZA2と同様に、
2枚のスチールプレートの間にコンクリートを充填するハイブリッド構造を採用する予定でしたが、
予算や、性能上の問題などから、結局スチールプレートは屋外側一枚のみとなりました。
しかしながら、外壁、屋根とも建物の表面は全て鉄板となり、「鉄の小屋」というイメージは実現しました。
その他、ホワイエには東海林弘靖さんが設計したプロジェクターライトを応用した照明器具を設置し、藤江和子さんが設計した移動できる家具が置かれました。
こうして、2009年に「座・高円寺」は竣工しましたが、建築のみならず、その運営においても、
「指定管理者制度」をうまく利用して、これまでにない新しい形式を採用しました。
指定管理者制度とは、従来地方公共団体が行っていた公共施設の運営を、企業やNPO法人に代行させる制度であり、
「座・高円寺」のケースでは、杉並区の住民が多い日本劇作家協会が結成した「NPO法人劇場創造ネットワーク(CTN)」が
劇場を含め、カフェやアートスクールを運営し、アーカイブ作業も行っています。
また、「NPO法人東京高円寺阿波踊り振興協会」や「座・高円寺協議会」といった地元団体も運営に参加し、
町を巻き込んだイベントを企画しています。
さらに、地元企業の協賛によりチケットの価格をおさえたり、子供を呼ぶイベントを催して次世代の観客・演劇人を育てる活動もさかんです。
今回の講義では、実際に担当スタッフとしてコンペから設計、施工まで現場で関わった東さんのお話を通じて、
設計や施工作業は試行錯誤の連続であり、ひとつの建築ができあがるまでには様々な物語があることがよく分かりました。
皆様こんにちは。千葉工業大学大学院、橋本都子研究室 修士2年の野坂京子です。
子ども建築塾第4回目の6月30日は、「おおきさについて考える」をテーマに、
「いえ」の中のさまざまなモノの大きさについて考えました。
はじめに、次週見学に行く藤本壮介さんが設計したHouse NAについて説明した後、
TAのみなさんの指導のもとHouse NAの図面をトレースします。
子ども達の住みたい「いえ」にある部屋やモノはどんな大きさなのか、
今日はそのことを頭に入れながら授業を進めます。
House NAはどんな「いえ」?
House NAは壁がほとんどガラスで、いろいろな大きさの部屋からできています。
子供たちには図面(1/100)、模型(1/50)、写真を交えながら説明をしましたが、
はじめて見るガラスの「いえ」に子ども達は驚きを隠せません。
『どうして透明なの?』『なかに何人住んでるの?』『ここはなんの部屋?』というように質問の嵐が起こります。
『来週は実際に見に行けるからね~』との先生の声に子ども達もわくわくしています。
© Manami Takahashi
いろいろな大きさを知ろう ①House NAをトレースしてみよう
House NAに興味津々となったところで図面のトレース作業に移ります。
まずは、子ども建築塾をお手伝いしていただいている建築家の柴田さんから製図道具についての簡単なレクチャーがあり、
つぎに子ども達用につくられたトレース用図面(A3用紙2枚)の上にトレーシングペーパーを置いて、線をなぞります。
トレース用図面には正面立面図・断面図・平面図が1/50の縮尺で書かれており、子どもによってトレースする図面の順番は異なるようでした。
三角定規を巧みに使い、いつもより集中して直線・平行線を引いていく子ども達の姿は建築家のようです。
© Manami Takahashi
いろいろな大きさを知ろう ②人や家具をおいてみよう
トレースした図面の上に、鉛筆で人や家具を描きこみます。
人や家具が1/50,1/100で記載されているプリントを参考に、子ども達は自分や家族を描いていきます。
中には1/50の猫を親猫とみたて、1/100の猫を子猫として描く子どももおり、縮尺の違いを利用して工夫しながら描きこんでいるようです。
© Manami Takahashi
いろいろな大きさを知ろう ③「いえ」と外のつながりを考えてみよう
トレースを終えて、子ども達にHouse NAのどの部屋に行きたいか尋ねます。
子ども達は『一番高い部屋からまわりの景色を見たい』、『部屋をぐるっとまわりながら外を眺めたい』、
『全部の屋上に行ってみたい』とHouse NAならではの特徴に興味を持っているようです。
中には図面の中の本棚を見つけて『本棚があるからこの部屋に行ってみたい』、
『車が好きだからガレージを見たい』と、自分の趣味に近い部屋も気になるようです。
© Manami Takahashi
来週はいよいよHouse NAの見学会です。
House NAは図面を見る限りとても複雑そうな気がしますが、
実際に体験することでスペースごとの用途は自然とわかるように計画されています。
トレースした図面の部屋の中を見た時、子ども達はなにを体感するのでしょうか。
ご報告が遅くなってしまいましたが、
先月、6/23(土)に「釜石商店街のみんなの家・かだって」が無事にオープンを迎えました。
※「かだって」とは、地元の方言で「みんなで一緒にやろう」という意味だそうです。
この場所が復興の拠点となり、みんなで一緒にがんばっていこう、という願いをこめて名づけられました。
6月23日、当日は薄曇りのお天気。
梅雨の時期で、雨も心配されましたが、皆さんの願いが通じたのでしょうか。
何とかお天気も持ちこたえ、無事にオープニングの日を迎えることができました。
オープニングセレモニーは15時半から。15時を過ぎると、続々と人が集まってきました。
定刻の15時半になり、いよいよオープニングセレモニーが始まりました。
まずは、主催者であるNPO@リアスNPOサポートセンター代表の鹿野順一様からご挨拶をいただきます。
続いて、釜石市長、伊東豊雄からののご挨拶がありました。
ご来賓の皆様からの祝辞をいただいた後には、テープカットです。
地元住民の方々や、協賛・協力をしてくださった大勢の皆様にお越しいただき、
無事にオープニングセレモニーが終わりました。
セレモニーの終了後は、和やかなムードのなか、懇親会がひらかれました。
最後に、参加してくださった皆様と集合写真を撮影しました。
夕方に差しかかり、我々は名残惜しい気持ちもありつつ、帰路につきましたが、
一部の方は夜まで残り、遅くまで歓談して過ごされたようです。
今後は、地元のNPO@リアスNPOサポートセンターさんが、この建物の運営を担ってくださいます。
@リアスさんのウェブでは、今回のオープニングの様子の他、
今後も随時「みんなの家」のレポートが紹介されていきますので、
ぜひチェックしてみてください! http://cadatte-kamaishi.com/?cat=186
皆様も釜石に行く機会がございましたら、ぜひ「みんなの家」にお立ち寄りいただければ幸いです。
※「みんなの家」のオープニングの様子を、各メディアでも取り上げていただきましたので、一部をご紹介します。
皆様こんにちは。千葉工業大学大学院、橋本都子研究室 修士2年の野坂京子です。
子ども建築塾第3回目の6月16日は、「いえのまわりには何がある?」をテーマに、
子ども達が描いてきた住みたい「いえ」の外側について考えました。
はじめに、前回の宿題である「いえ」の内側について発表し、その後に太田浩史先生から
「いえ」と環境についてのレクチャーを受けた後、TAのみなさんの指導のもと「いえ」の外側の絵を描きます。
「いえ」の中はどうなっている?
前回の宿題として、住みたい「いえ」の中でおこなう「食べる、寝る、遊ぶ、集まる」という4つのアクティビティについて考えてきた絵を発表します。
従来とは異なった、新しい提案も含めて描かなければなりません。
大人顔負けの難しい宿題ですが、子供たちは各々新しいライフスタイルを想像してきました。
特に「遊ぶ」という行為は、子どもたちの本領が発揮された提案でした。
例えばクローゼットの上に『いっぱい遊んでも大人に怒られない部屋』がある点などは、
鋭い視点をもっていなければ、空間のどこがみつかりにくいか考えられないでしょう。
子ども達は無意識の内に空間と行為の相性を見つけているようです。
太田先生のレクチャー「みんなの家はどこにある?」
私たちが普段住んでいる「いえ」のまわりには、人や建物などの「まち」の要素や、光や熱(温度)・風などの自然の要素があります。
住みたい「いえ」のまわりを描く前に、さまざまな環境と「いえ」の関係性について事例を交えながら勉強します。
まず、自然とかかわる「いえ」の事例として、パプアニューギニアの集落を紹介しました。
太田浩史先生が20年前に調査に行った時の写真を見ながら、川や山にある「いえ」の形について
『なぜこうなっているのかな?』と問いかけながらレクチャーを進めます。
同じ写真を見ていても、子ども達は『これはトイレじゃないかな?』『食べ物の貯蔵庫かも!』『キッチンだよ!』とさまざまな回答を考えだします。
電気やガスのない自然の暮らしに子供たちも釘付けになっていました。
最後は光や風、熱と「いえ」の関係について、さまざまな建築家が建てた「いえ」の事例を紹介します。
伊東先生のシルバーハットは海風が気持ちよさそうです。
太田浩史先生のレクチャーを受け、子ども達は改めて「いえ」のまわりの大切さに気づき、環境について興味を持ち始めた様子でした。
子ども達の住みたい「いえ」は、どんな場所に建っているのでしょうか?
「いえ」のまわりにはなにがある?
レクチャーの影響により、「いえ」のまわりの自然に注目しながら絵を描く子が増えました。
そのなかでも、孤島や森などの自然の中に「いえ」をおくタイプと、「いえ」の中に木や芝生などの自然を取り入れる2つのタイプに分かれます。
両者に共通していたのが、自給自足を目標としていることでした。
孤島のまんなかに「いえ」を描き、季節の野菜を食べられる提案をする子ども、
「いえ」のなかに実のなる木が生えており、ジャムをつくる提案をする子どもなど、
自然によりそう色々なライフスタイルが提案されました。
今回、子ども達の住みたい「いえ」の内側と外側を見て、子ども達の「いえ」には家族のライフスタイルが強く影響していることに気づきました。
例えばリビングは『お父さんが帰った時にあったかい食事をだしてあげること』ができ、
ダイニングは『おばあちゃんが立ちやすいダイニングチェア』が置いてあることが提案されています。
子ども達が普段から家族の様子をよく見ていることが伺えます。
彼らの考える『住みやすさ』はいったいどんな形であらわれるのでしょうか。
次回は、今度見学会に行く住まいの図面をなぞります。
実際の図面を見て、子ども達がどんな反応を示すのかとても楽しみです。
みなさま、こんにちは。
東京大学大学院修士課程、太田浩史研究室1年の山本至です。
子ども建築塾第2回目の6月2日はみんなで「いえ」の中でおこなう「食べる、寝る、遊ぶ、集まる」という4つのアクティビティについて考えました。
はじめに伊東先生、太田先生からの説明を受けた後、子ども達はAからDまでの4つのグループにわかれ、
TAのみなさんの指導のもと「いえ」の中でおこなう4つのアクティビティを絵に描きます。
ただし自分の住みたいいえの内側で、従来とは異なった様相でこれらの活動が行われたら楽しいのではないかという提案も含めて描かなければなりません。
「食べる、寝る、遊ぶ、集まる」
私たちは普段、これらの活動を「いえ」の中で当たり前のようにおこなっています。
しかし私たちは「いえ」の内側で行われている活動の一つ一つを注視することはありません。
「いえ」というのは元来、非常にプライベートな空間で、他者の目を気にしなくてよいあまり自分の行動に自覚的でないことも要因の一つかもしれません。
自分の住みたいいえの中でこれらの活動をどのように体現するか。普段当たり前におこなっていることだからこそ、深く考えるのは逆に難しいのかもしれません。
すんなりと課題に取り組む子もいれば、課題そのものについて深く悩んでしまう子もいました。
その違いは恐らく彼等が初回に描いてきた「自分の住みたいいえ」にどこまでストーリーを投与していたかに依拠しているのだと思います。
ただ単に、こんな外観ならおもしろいとかこんなデザインならかっこいいといったことだけで建築を設計すると大人も子どもも限らずに内側のことを忘れてしまいがちです。
そのおもしろい空間に対して、それが誰に、どのように使われているかというイメージが重なり合うことで、空間はさらなる彩りを増します。
そのことに子ども達が自覚的であったかどうかはわかりませんが、この課題に取り組んでゆくにつれ、彼等が抱く意識にある種の変化が見られたことは確かです。
寝るという活動は囲われた部屋のベッドの上で行われることが当然のようにイメージされますが、屋根の上で寝たっていいわけです。
そうするとただのトタン屋根よりも、芝生の屋根のほうがやわらかくて寝心地が良い。そこから建築の形が変わってしまいます。
1人の男の子は実際にそのようなプロセスを経て芝生の屋根を描いていました。
それは単純なイメージにすぎないかもしれませんが、建築の空間を劇的に変えてしまいます。
誰とどのようにすごすか。一つの現象が形態に大きな変化を及ぼす。これは私にとっても大きな発見でした。
さらにこの課題について、子ども達の様子を見ていくともう一つおもしろい事実に気がつきます。
それは「食べる」「寝る」「遊ぶ」という3つのアクティビティを描くことに比べて「集まる」という課題を難しく感じていたということです。
現代社会において「いえ」の中というのはプライベートな空間として隔離されており、そこに他者の存在をあまり感じさせません。
家族はそれ自体が一つの単位として認知されているためその構成員は他者とは見なされない。
だからこそ集まるというときにうける他者が入り込んでくるイメージと、「いえ」というのが結びつかないのかもしれません。
「集まる」という言葉に戸惑ってしまい、「いえ」の中で集うということに対してイメージがつきにくい。
ただ子ども達は一概に「いえ」を極端なプライベート空間と捉えているわけでもないようです。
中には友達とご飯を食べている絵を描いていたり、全く知らない人と遊んでいる絵を描いていたり、無意識のうちに人が集まっているのです。
ただそれが「集まる」という言葉に換言されるとよくわからない。集まること自体が明確なアクティビティではないからです。
これから「自分の住みたいいえver.2」を描くにあたってどんな言葉で表す事もできないような人の集まり方を表現できたら、
それはとてもおもしろい「いえ」になるんじゃないかなと思いました。
今回は「いえ」の内側について考えましたが、次回は「いえ」の外側について考えていきます。
その両方に自覚的になったとき、いろいろな人が集う新しい「いえ」の姿が見えてくるのではないでしょうか。
こんにちは。伊東豊雄建築設計事務所の高池さんからの現場レポートを元に「釜石商店街のみんなの家」の現場の様子をお知らせします。
おかげさまでいよいよオープニングまであと10日を切りました。
内装工事がほぼ完了しました。
残された外構工事や器具の取付などが終わると竣工となります。
●ボランティア塗装作業
7日から8日までボランティアのメンバーで内壁と木部の塗装作業を行いました。
当初9日までの予定でしたが,たくさんの方が参加してくださったお陰で,2日で終えることができました。
東京から来た伊東塾の8名,神戸から来た神戸芸工大の学生さん1名と共に釜石の住民の方5名が参加してくださりました。
職人さんにご指導いただきながら,通常は2~3回塗りのところを4度重ね塗りをして,非常にきれいに仕上がったと思います。
塗装の手順としては以下の通りです。
(1) 養生
塗装する部分以外をマスキングテープで覆います。
(2)下地調整
合板の継ぎ目の部分とタッカー跡のへこみのある部分をパテ埋めして,
塗装面の下地を平らに整えます。
(3)下塗り
コンセントの開口部廻りや幅木など細かい部分ははけで,
その他の大きな面の部分はローラーで塗ります。
(4)やすりがけ
乾いた面にやすりをかけて,表面をなめらかにします。
(5)上塗り
(3)から(4)の手順を壁全体のむらがなくなるまで何度か繰り返します。
(6)養生外し
塗装が終わり次第すぐに養生を外します。
●花壇作り
7日に増田さん(昨年度伊東塾スタッフ)が千葉から8時間かけてお花を運んできてくださりました。
到着された時,車の中は花で一杯でした。
旬のアジサイやローズマリーなどのハーブ系の草,アイビーなどのつる植物,
繊細な茶花など,見ているだけで元気になるようなたくさんのお花をみんなで植えました。
ボランティアのご協力をいただいた皆さんありがとうございます。大変お疲れ様でした。
●ベンチ取付,照明器具・キッチン取付
12日に家具監修のイノウエインダストリィズの井上さんがベンチの取付をしてくださりました。
塗装を終えた直後は真っ白壁に囲まれた少し静かな印象だったのですが,ラワン合板の
ベンチと手作り家具が入ると楽しい雰囲気が出てきたと思います。
照明器具やキッチンも取り付きました。
●釜石からドイツへ送られたガレキのメッセージ
伊東事務所では,6/9~9/16までドイツのカッセルで行われている「ドクメンタ」http://d13.documenta.de/
というアートの展覧会に,震災復興とみんなの家をテーマにした作品を出展しております。
@リアスなど釜石市民の皆さんにご協力いただいて,「釜石商店街のみんなの家」に
あったガレキに復興への思いをかいていただきました。
無事にそのガレキがドイツに送られ,ブースの角に展示されました。
これはとても反響があったそうで,照明設備の都合上実現しなかったのですが,
展示会場の真ん中に置きたいという声もあったそうです。
この展示はドイツでの展示の後,韓国にも巡回する予定です。
以上長文失礼しました。
ここまでこれたのは本当に皆さんの暖かいご支援とご協力のお陰です。
通常の建築においては,設計・施工監理という立場上,私からの現場レポートは今回で最後ということになります。
しかし,「みんなの家」はできてからが始まりの建築です。
今後も実際に使われている様子などを皆さんと共有したいと思い,引き続きこの勝手なレポートを続けさせていただきます!
23日のオープニングには,ぜひお誘い合わせの上,お越しいただければ幸いです。
皆様にお会いできるのを楽しみにしております。
伊東豊雄建築設計事務所
高池 葉子